« 2013年09月 | メイン | 2013年11月 »
Train factory
地下鉄車両の整備工場に潜入。公開日で撮影もOKでした。
工場の風景を撮るのってとっても楽しい。
Stereo Realist F2.8 / Kodak E100VS
クリックすると大きな画像が出ます。交差法でご覧下さい。
投稿者 J_Sekiguchi : 2013年10月31日 10:00
続・ステレオ10のひみつ(おまけ)
整備完了したウオーレンサック・ステレオ10で撮影。交差法でご覧下さい。
距離計の調整もうまくいきました。
エクターレンズ付きリアリストと同様、暖色系の階調が豊かです。絞り開放での柔らかな描写がすばらしい。
分解では厳しい評価をしましたが、写りはやはりキングです。
wollensak stereo 10 / Kodak EBX
投稿者 J_Sekiguchi : 2013年10月24日 10:00
続・ステレオ10のひみつ⑤
ステレオ10はメンテナンスが難しい機種だということがわかりました。カメラの機能、性能の評価はこれから使って確かめるとしても、機械としての完成度はいまひとつと厳しい評価をせざるを得ません。少なくとも旅行に持ってゆくには不安が残ります。工具セット一式を持っていっても迅速に修理はできないでしょう。トラブル対処に苦労しそうです。
それでも、この明るいレンズと高速シャッターの充実は魅力です。今後、撮影を重ねてこのレンズの描写の特長を掴んでみようと思います。それにしてもこのカメラ、どのような背景で誕生したのでしょう。ちょっと妄想してみましょう。
同じボディを使うカメラにリベア33があります。資料によるとこちらの方が後に登場したとありますが、僕はそうは思いません。フロントのエンブレムはリベア33がオリジナルで、型を流用してデザインを変えたのがステレオ10でしょう。つまり、ステレオ10の方が後に登場した。リベア33のアップグレードとして、レンズユニットを丸ごと交換したというのが真相ではないかな。この方法なら設計変更、設備の更新も最小限に、すばやく市場に新製品を投入できる。
ウオーレンサックの社史を調べると、もともとはレンズとシャッターを専門に製造する会社でした。1953年にリベア社に買収されています。この頃にステレオ10が登場したと想像します。これより少し前、ステレオカメラの流行で市場は急激に拡大し、デビッド社は先行してエクターレンズ搭載のリアリストを投入します。これは脅威だったはずです。
リベア社はこれに対抗する製品をすばやく送り出す必要があったのです。以前より関係のあった会社を買収し、レンズに著名なブランドを前面に。そしてリアリストのF2.8より僅かに明るいF2.7レンズを採用する。これが戦略でしょう。設計をやり直す時間などあるはずもなく、既存の製造体制のまま作られた、というのがキングのひみつでは。
(おしまい)
当時のライバル、ウオーレンサックとコダック・エクター
どちらもアメリカを代表するレンズブランドです。
投稿者 J_Sekiguchi : 2013年10月17日 10:00
続・ステレオ10のひみつ④
いよいよ最終組立です。距離計もユニット化されていますが、ここの設計が納得いきません。製造時の組立は治工具の併用で簡単にしていたのでしょうが、メンテナンス性は最悪です。ちょっとファインダーを清掃しようかな、なんて開けたら大変です。距離計の調整がとてもやりにくくなっている。繰り返すけど、無用な分解は禁物ですよ。
まず、フィルムレールにピントグラスを当てて、遠距離の実像で無限遠を出す。この状態で距離計の二重像が合致するようにミラーを、フォーカスダイヤル軸に直結した駆動カムを動かして調整します。問題は、距離計を観察しながらカムの調整ができません。トップカバーをボディに組付けないと距離計が使えず、トップカバーの外からカムにアクセスできないのです。仕方なく、今回はトライ&エラーで近付け、最後はミラーの固定ネジのアソビで追い込みました。
カムと連動するミラー駆動のレバーは板を2枚重ねた構造で、製造時はこの板をずらして調整したようです。トップカバーの革張の下には沢山の穴が開いています。調整のためのアクセスホールです。ここから工具を入れて調整をし、さらに接着剤を使って固定していたようです。アクセスホールの中には目的がわからないものもあります。
文章で構造を説明するのは難しいのですが、大変だというのが伝われば幸いです。今回、距離計の調整が成功したのは幸運というほかありません。さあ、あとはとっとと仕上げ、革張りを換えましょう。トップの革はアクセスホールを隠すため・・・こんなことをするなら、開口部を作って金属板で蓋をしたほうがマシだと思いますが。
せめてここはかっこよく仕上げましょう。劣化のひどい合成皮革は捨て、黒のトカゲ革に換えます。うろこの向きをよく見て切り出します。慎重に貼り付け、最後に一連の動作確認をし、ストラップをつければ完了です。
つづく
投稿者 J_Sekiguchi : 2013年10月10日 10:00
続・ステレオ10のひみつ③
ステレオ10の巻き上げ制御は、巻き上げ軸のギアに集約されています。1回に10スプロケットの送りは、1回転ごとにストッパーがかかるギアで制御されています。巻き上げカウンターのダイヤルをRに合わせると、このストッパーが跳ね上げられてフリーになります。でもこれだけではスプロケットギアがフリーにならず、巻き戻しができません。
巻き上げ軸はカメラ底部のギア機構にもつながっています。カウンターダイヤルをRにし、巻き上げノブを逆転すると、ここを伝い、スプロケットギアの勘合を解く仕組みです。勘合の解除は先に述べたカム形状を持ったギアで行ないます。底部のギアはシャッターチャージのために、回転運動をクランクで往復運動に変える働きもします。
次にシャッターユニットを点検しましょう。シャッター制御機構は右レンズに集約されています。機構としては一般的なレンズシャッターと同じ。ガバナーに固着がある場合、注油などしたいところですが気をつけましょう。シャッター羽に油が回りやすい構造をしています。今回は分解せず、輪列の軸部にごく僅かに注油するにとどめました。
左右のシャッターは連結棒でつながり、左シャッターにはシンクロ接点があります。ストロボ同期になるよう調整したいところですがちょっとやりにくい。ストロボをつないで発光させ、開口部の残像を確認するのがよいでしょう。
ここまでの作業で、レンズユニットとボディの製造は別の会社で行なわれていたという憶測が沸いてきました。それだけでなく、設計も別の会社で行なわれていたと考えるのが自然に思えてきました。ユニットを設計込みで外注に出すというのは製造業として当たり前に行なわれることですが、全体設計がうまくないと良くない製品が生まれます。このカメラでは、レンズとボディのインターフェイスが単純化されているので成功していますが。さてさて、組立てよう。
このユニットはよくできています。まさに中核。
投稿者 J_Sekiguchi : 2013年10月03日 10:00