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続・ステレオ10のひみつ⑤

 ステレオ10はメンテナンスが難しい機種だということがわかりました。カメラの機能、性能の評価はこれから使って確かめるとしても、機械としての完成度はいまひとつと厳しい評価をせざるを得ません。少なくとも旅行に持ってゆくには不安が残ります。工具セット一式を持っていっても迅速に修理はできないでしょう。トラブル対処に苦労しそうです。
 それでも、この明るいレンズと高速シャッターの充実は魅力です。今後、撮影を重ねてこのレンズの描写の特長を掴んでみようと思います。それにしてもこのカメラ、どのような背景で誕生したのでしょう。ちょっと妄想してみましょう。
 同じボディを使うカメラにリベア33があります。資料によるとこちらの方が後に登場したとありますが、僕はそうは思いません。フロントのエンブレムはリベア33がオリジナルで、型を流用してデザインを変えたのがステレオ10でしょう。つまり、ステレオ10の方が後に登場した。リベア33のアップグレードとして、レンズユニットを丸ごと交換したというのが真相ではないかな。この方法なら設計変更、設備の更新も最小限に、すばやく市場に新製品を投入できる。
 ウオーレンサックの社史を調べると、もともとはレンズとシャッターを専門に製造する会社でした。1953年にリベア社に買収されています。この頃にステレオ10が登場したと想像します。これより少し前、ステレオカメラの流行で市場は急激に拡大し、デビッド社は先行してエクターレンズ搭載のリアリストを投入します。これは脅威だったはずです。
 リベア社はこれに対抗する製品をすばやく送り出す必要があったのです。以前より関係のあった会社を買収し、レンズに著名なブランドを前面に。そしてリアリストのF2.8より僅かに明るいF2.7レンズを採用する。これが戦略でしょう。設計をやり直す時間などあるはずもなく、既存の製造体制のまま作られた、というのがキングのひみつでは。
(おしまい)

キング⑤.jpg
当時のライバル、ウオーレンサックとコダック・エクター
どちらもアメリカを代表するレンズブランドです。

投稿者 J_Sekiguchi : 2013年10月17日 10:00


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