STEREO CLUB TOKYO

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耐久性考察

 ステレオリアリストをはじめ、1950年近辺に製作されたカメラが21世紀の現代においてもなお、十分に実用できるコンディションであることは驚くべきことである。機械構造物が60年近くの間、部品の損耗、劣化などが少なく、使用する上で影響するレベルに達しない、というのは何かヒミツがあるはずだ。
 リアリストを分解し細部を観察するとわかるのだが、機械系部品は全て金属でできている。極僅か、フラッシュの回路の絶縁として樹脂が使用されているのを認めるのみ。これが脅威の耐久性のヒミツだろう。
 金属だって、長期のうち酸化し、錆びが出る。だが、精錬された品質の良い金属を使い、表面を磨いた部品というのは錆びにくい。使い方や保管方法を工夫すれば、さびが原因で作動不良になることは少ない。
 もう一つの弱点は金属疲労だ。破壊に至らない弱い力でも、繰り返し作用すると金属結晶の粒界面に亀裂が入り、これが進展して破壊に至る。これも作用する力の大きさと想定回数から、十分に耐えられる材質を選定と部品寸法を出し、形状を製造図面に反映させる。このあたりが設計にかかわる技術者の腕の見せ所だ。
 耐久性で問題になるのはやはり、樹脂類といった経年変化で劣化するもの。繰り返しの応力だけでなく、酸化や重合した分子の分解、再架橋化により、軟化、ひび割れ、硬化が起きる。昔のカメラでモルトプレーンがベタベタになるのも、樹脂の酸化による劣化現象だ。こうなると交換する以外に機能回復はできない。
 もっと困るのが電子部品。電解コンデンサーなども劣化するし、基盤が錆などで断線し、機能不良につながるケースも多い。こんな素材が無かった‘50年代のカメラは、そのおかげで機能を保てている。皮肉なものである。

投稿者 J_Sekiguchi : 2013年05月02日 10:00


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