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水素増感
カメラの保管庫で「減圧してはいけない」ということを書いた。これがフィルムになるとまた別の現象が起きるので紹介しよう。写真フィルムを真空下に置いておくと、感度が上昇する。どうやら真空下に放置することで僅かに含まれる水分が放出し、感度上昇に働くらしいのだ。詳しい仕組みは解明されていないとも聞く。
この現象は天体写真を撮影する時、フィルム感度を上昇させる方法の中で紹介されていた。感度を劇的に上昇させる方法として、更にフィルムを水素ガスに暴露させる方法がある。原理は水素ガスがハロゲン銀に作用し、潜像を作る前の励起状態に活性化させるというもの。この方法はアマチュアを巻き込んで工夫がなされた。
この手法は主にモノクロフィルムで活用され、超微粒子にも関わらず高感度が得られるということで脚光を浴びた手法なのだ。暗黒の宇宙空間に仄かに輝くガス星雲を捉える、伝家の宝刀だった。
僕も昔、フィルムを真空に引く装置を自作したりもしたが、今ではそんな人も少ないだろう。今僕がこの方法が活用できるのではないか、と企んでいるのが、ローライスライドダイレクト(RSD)の感度上昇作戦である。
通常の現像処理でモノクロポジが得られるRSDは魅力的なフィルムである。既にRSDは入手しているのだが、テクニカルデータが乏しい。かなり感度が低く、普通のフィルムとは撮影の勝手が全く異なる。
感度が低くて使いづらいならば、水素増感をして使いやすい領域まで引き上げたらどうか。もちろん、フィルムの特性もあるから失敗に終わるかも知れない。こんなことを考えながら、めんどくせえ手法の考案を面白がっているのだ。こんな化学実験みたいなこと、フィルムならではの遊びである。そう、フィルムは遊びが満載である。
投稿者 J_Sekiguchi : 2013年04月25日 10:00
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