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工具の手入

 カメラの修理をする上で、最も重要な工具はドライバーだろう。古いカメラには小さなネジが何本も使われている。これを回すのに、ネジの大きさに合わせてドライバーを選択する。合わないものを使うと、ネジの頭をひどく傷つけたりする。古いカメラをよく見ると、ネジの頭のきれいなものは少なかったりもする。
 ちゃんとした職人なら、ネジの頭を傷つけずに回すことができるが、素人がやるとドライバーがネジから逸れて、ネジの頭のきれいな溝をいびつな形につぶしてしまう。昔のネジの頭はいわゆる“マイナス“の溝がある。
 正式にはこの溝は”すり割り”という。‘50年代のカメラに使われているのは、ほぼ全てこのタイプ。現代ではプラスと呼ばれるものばかり。プラスネジは扱いやすいため、工場がコンベア化されると共に急激に需要が伸び、すり割を駆逐した。だが、すり割りネジは締め付けにトルクを伝えやすく、そういった分野には今でも使われている。
 さて、トルクを伝えやすいすり割りも、ドライバーの使い方が悪いと効果はない。精密ドライバーの尻に付いている回転座。これはドライバーをネジに押し当てても回転させやすくする工夫なのだ。ネジを回すときは、締めるときも緩めるときも、ドライバーを強くネジに押し当てる。ただし先端とすり割がきちんと合致していること。
 ドライバーは使えば磨り減ってくる。定期的に手入をすることが大事。ヤスリや砥石を使い、ドライバーの先端をきれいに整える。ピンセットなどの道具も同じ。かみ合わせに隙間ができないよう、慎重に、丹念に仕上げる。
 整えた形が良いか、ルーペで確認する。さて、自分の思い通りに仕上がっているだろうか。気持ちが落ち着いていないときにやると、それが表れてしまう。ネジを回すということにも、いろいろあるということだ。

投稿者 J_Sekiguchi : 2013年03月21日 10:00


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