« 2012年08月 | メイン | 2012年10月 »
みえないもの
見えないものが、見える。いや、あなたの後ろに御先祖様が立っていらっしゃる、という話じゃない。写真にすると、見えない光を捉えることができるという話。目に見えない赤外線や紫外線も、フィルムは感じることができる。
いまから30年位前は、天体写真の撮影にはリバーサルフィルムを使うのが当たり前だった。ところが、カラーネガフィルムを使うと星雲がよく写るという記事が天文雑誌に掲載された。サクラカラーのASA400フィルムが最適と紹介されたのだ。実際使ってみるとよく写る。「天体写真にはサクラカラー」という大ブームが起きた。
ガス星雲は望遠鏡を使っても、目ではほとんど見えない。おもに水素で構成されるガス星雲からは、水素が励起して発光する赤外線に近い光が強く出ている。この波長は目では見えにくい。だが、フィルムはこの光も感じ、サクラカラーはこの波長の感度が他のフィルムより高かったのでよく写ったのだ。
自分が撮った写真にガス星雲が赤く写ったときは感動した。何もないように見える夜空の一角なのに、写真ではたくさんの小さな星たちと一緒に星雲の姿を捉えることができたのだから。感光材料の工夫で見えない光を捉え、超音波の周波数を下げて聞こえるようにしたり、科学の力は人間の世界観を確実に変えてきたはずである。
一方で、感じないということも大事。どうも、僕は高音域の音が他人より聞こえやすいらしい。ブラウン管のテレビから高い音が出ているのを、隣の部屋からでも感じる。煩わしいのだが、家族の誰もそんな音は聞こえないという。
猫は、もっと高い波長も聞き取るという。彼にとって家の中はさぞうるさいことだろう。そんな彼は、僕にはちっとも匂わないマタタビの実に夢中だ。匂いにも人間が感じない、猫にはわかる領域というのがあるのだろうか。ふしぎ。
かのヘールボップ彗星もネガフィルムで撮影しました。&ウチのねこくんたち。
投稿者 J_Sekiguchi : 2012年09月20日 10:00
小さなステレオ世界の探検
ドラえもんの道具で、トンネルをくぐると体が小っちゃくなるのあったよナぁ。そんな道具があったら、普段の風景が大きくなって非日常の世界になる。東京ディズニーランドのコンセプトは非日常の提供にあると聞いたことがあるから、この道具があれば普段のリビングがディズニーランドに変わるのではないか。未知の世界を探検できる機械。
そんな道具が本当に登場するかは怪しいが、見るだけなら虫眼鏡でもそれなりの非日常が体験できる。虫眼鏡一つで身近にあるものを観察するとおもしろい。これが立体視なら、もっとおもしろい世界として感じられるだろう。それを実現してくれるのが実体顕微鏡である。英語ではステレオ顕微鏡とか双眼顕微鏡という感じで呼ばれている。
これを使って鉱物結晶を観察すると、拡大された像が立体に見えてとても面白い。でも、この顕微鏡は買うと高いのだ。ホビー用なら1万円台からあるが、ちょっと仕様が上がると諭吉さんがたくさん必要。
海外にはいいのがあるかな。でも、こういうのは日本製に限るのだよナぁ。ためしにebayでstereo microscopeを検索すると、自分の考えは間違っていることを思い知らされた。安くて品揃い豊富。さまざまな仕様の顕微鏡がどんどん出てくる。さらに円高だから、ここでは毎日円高還元セールをやっているようなものだ。
ebeyは個人が中古品を出品していると思っている人も多いだろう。だが、ebayを利用して新品を売っている業者も多い。数多くの出品から、ターレット対物レンズ付きで、透過光照明と上方照明の両方ができるモデルを選択した。本体が諭吉さん1人、送料が樋口さん1人というところ。なんと支払から4日後には品物が到着した。
届いた顕微鏡の見え味はバツグン。そういうわけで僕の机の上では、いつでも鉱物の夢の世界が現れる。
投稿者 J_Sekiguchi : 2012年09月20日 10:00
置き忘れた!
海外に行くときは、必ずステレオ・リアリストがお供でついてくる。それが当たり前になったのだが、たくさんのフィルムを持ってゆくことに工夫が必要であることは、前に紹介したとおり。けっこう苦労する。
撮影本数が多くなると、撮影順番を記録しておいたほうが後々便利だ。マウントのときには、撮影順に作業をしたほうがやりやすい。そんなわけで、たくさんのフィルムを使うときはフィルムIDユニットを使う。
それは、以前にリアリストの付属品として紹介した、小さな折りたたみルーペのようなヤツ、ST-523である。飛行機に乗る前日、旅の準備の仕上げとして、あらかじめ番号を書いた紙をセットした。
このアクセサリー、金属製で折り畳みができ、なかなか良くできている。塗装もなかなか渋い。昔の機械製品によく見られた、微妙な凹凸が施された塗装がしてある。黒い本体には白文字でロゴがプリントされている。
だが、黒一色という所がいけなかった。照明を落とした長距離飛行の旅客機座席ではよく見えない。鞄から出した後、所在が判らなくなった。それでも、鞄に入れなおしたというおぼろげな記憶で機を降りる。で、紛失。
仕方がないので、何本目かを記録するのは、はじめのコマに自分の右手を写すことにした。数を数えるように指を折る。手のひら側と、甲側を使って10本目までは何とかなったが、その後はどうすることもできなかった。
後日、航空会社に忘れ物の届けがないか問い合わせたのだが、どういう品物か伝えるのに苦労した。古いカメラの道具だと言っても理解されるはずもない。小さな黒いルーペと伝えたが、残念なことに結局見つかることはなかった。
しばらくしてebeyに出品されているのを見つけ、送料込み千円ほどで再入手。こんどは紐でも付けておこうか。
投稿者 J_Sekiguchi : 2012年09月13日 10:00
⑦空港での椿事
フィルム派にとって、デジタルカメラっていいなと心から思う場面が空港での検査である。フィルムはX線でも感光するから、X線の照射は避けたい。だが空港での荷物検査は厳しい。スーツケースなど、カーゴエリアに行くものは爆発物の侵入を防ぐため、X線で徹底的に調べられるらしい。僕も死にたくはないので徹底的にやって欲しいのだが、強力なX線が使われ、フィルムが感光してしまうという。フィルムは必ず、手荷物で機内に持ち込まねばならない。
そんなわけで、海外旅行にたくさんのフィルムを持ってゆくとき、全部手荷物にしなければならないところが煩わしい。手荷物検査場のX線は、普通のフィルムなら感光しない程弱いので悪影響は無いという。それでも、乗り継ぎのたびに何度も検査を通すのは気持ちの良いものではない。影響の有無は現像しなけりゃ判らないのだから。
万全を期して、フィルムは鉛入りのシールドバッグに入れることにする。20本越えのフィルムは嵩張るので、全て箱とプラケースを外し、ビニールのチャック付小袋に入れ替えた。これを弁当箱程度のプラスチックのボックスに入れ、さらにシールドバックでくるむ。これをさらに黒いナイロン袋に入れた。この黒い物体、怪しいことこの上ない。
いよいよ空港の手荷物検査で中身が見えない黒い箱が登場。爆発物のような姿。チェックされると構えたが、怪しまれたのはカメラの方だった。ドイツを出る手荷物検査で、不思議な物体・リアリストのせいで別室ご案内となった。
厳つい係官が、これは何だ?と。ステレオカメラだと説明すると、フィルムか?。当たり前じゃないか、1955年のカメラだ、と答えると、呆れた表情でその3D写真はないのか?。サンプルで持ってきたステレオ写真はスーツケースの中だ。まあいいや、と放免となった。次に来るときには立体写真を堪能いただこう。お楽しみに。(ドイツの旅・おわり)
コックピットのドアが開放されてたのでパチリw
投稿者 J_Sekiguchi : 2012年09月06日 10:00