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③残酷なる壁、その跡
もう20年も前に無くなってしまったから、今となっては昔話なのかもしれない。東西ドイツに分断していた時代、大国間の冷戦を象徴する存在。ベルリンの壁である。東側から西側への、市民流出を防ぐために作られた恐ろしい壁。
1961年に建築され、1990年の東西ドイツ統一まで西ベルリンを包囲していた。壁が壊されてから20年も経つとその当時の面影はもうない、と街の人々は言う。東西は融合し、新しい一つの都市になっている。
壁が建っていた場所には、それを記す記録として地面にライン状のプレートが埋め込まれている。新しい道がこのラインを跨ぐように通っている。新しい風景が、ずっと前からそうであったかのように、当たり前のようにここにある。
全長150kmを超えて建設されたベルリンの壁も、今では歴史の証人として一部が残されているだけになった。その場所を訪れると朽ちた壁がある。市民の手で壊されたコンクリートの壁は、内部の鉄筋があらわになっている。
この場所の近くに、かつてチェックポイント・チャーリーと呼ばれた西側の検問所があり、今では観光地になっている。露天の物売りが、東側の古い銀貨とか、怪しげなミリタリー・グッズを並べている。全く平和な風景だ。
またしばらく歩くと、18世紀末に造られたブランデンブルグ門につながる広場に出た。この日は休日で、何かの記念日だったのだろう。あちこちに兵士に扮装した人々が集っている。お祭りのような雰囲気。これも平和な風景だ。
カメラを向けると、みんな並んで笑顔一杯で撮ってくれと言う。ではと、一枚撮り、礼を言いつつ目の前の小箱に小銭を入れた。もう少し見て回ろうと思っていたのだが。低く立ち込めた雲から、とうとう雨が降りだした。雨粒はたちまち大きくなってゆく。こうなると観光どころではない。リアリストを懐に入れて雨宿りだ。(つづく)
投稿者 J_Sekiguchi : 2012年08月09日 10:00
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