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④戦史探訪
ベルリン市はブランデンブルグ州に囲われている。だが、ブランデンブルグ州を構成する市の一つがベルリン市なのではない。州の真ん中に、全く行政の異なるベルリン市がぽかりと位置しているのだ。地図で見るとなんとも奇妙だ。
ブランデンブルグ州の州都はポツダム。この名を歴史の教科書で見た覚えのある人も多いだろう。第二次大戦の末期、終戦のあり方を米英ソ連で会談した場所である。では、引き続き戦史をたずねてみよう。
ポツダム会談が開かれたのは、郊外にあるツェツィーリエンホーフ宮殿。今は内部を見学することができる。20世紀初頭にドイツ帝国の皇太子のために建てられた。その古びた建物は、宮殿というよりは瀟洒な邸宅という感じ。
今でも庭木は丁寧に手入をされ、花壇には花があふれ、古い波打つガラスが張られた建物の窓辺には蔦が生い茂る。湖畔の緑に囲まれた大きな別荘。その中で世の中を大きく変える会談が為された。
それは1945年の夏のこと。ツェツィーリエンホーフ宮殿の一角に、大きな円卓をしつらえた部屋がある。天井は高く、細かく仕切られたガラス窓から柔らかな光が差し込んでいる。ここに米英ソ連の首脳陣が集い、ナチス・ドイツ降伏後の終戦処理と、我が国への終戦について話し合いがされ、ポツダム宣言が発せられた。
その後、終戦に向けた混乱と、さらに大きな犠牲が生じた。そして、長く続いた世界大戦が終結に至る。
宮殿の中にはいくつもの部屋があり、書物や資料で埋め尽くされた書棚が林立する。その書物の中には、日本に関するものも見ることができる。この場所で大きな苦悩と決裂、そして決断が繰り返された。その時の重い空気が各部屋の隅に、今も残っている。いつまでも、そう、いつまでも。人間とは何と罪深き生き物であろうか。(つづく)
投稿者 J_Sekiguchi : 2012年08月16日 10:00
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