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いにしえの露出計
一時、露出計の針の振れる姿が愛おしくて、小さな彼らを買い求めた時期がある。街の中古カメラ店に立ち寄っては、小さな彼らが棚の隅に隠れていないか探す。何かの下に隠れているのではないかと、ジャンクのかごを掘って探す。
まるで森に入ってカブト虫やらクワガタ虫を探しているようなものだ。見つけると手に取らせてもらって、昆虫の複眼のような形をしている受光部を観察し、触覚のように振れる針を見つめる。ボディは黒光りのするベークライトだったり、コガネムシのように輝く梨地のクロムメッキだったりする。明るい方に向けると、生き物のように針が動き出す。
50年ほど前に生まれた彼らは、セレン光電池を動力にしている。光が当たると電気が起きるものだ。いまでは百円で買える電卓にも太陽電池が使われているが、セレン光電池は太陽電池の先駆けだ。シリコンの太陽電池が主流になった現代では、セレン光電池はほとんど作られていない。劣化して起電力が弱くなったものを復活させる術は乏しい。
それでも、弱々しく振れる針であっても、いつか使えるようにできるかもしれないという思いでいくつも買った。もしかしたら、まだ使えるセレン光電池と交換すれば、また元気に動き出すかもしれない。
でも、フィルムの感度設定も、シャッター速度の表示もいにしえのもの。また動くようになっても、まるで古文書を読み解くようにして使わなければならないのかもしれない。それでも、この小さな奴等がカメラのシューに乗っている、それだけでも楽しいじゃないか。昆虫の複眼のような受光部が光を捕らえている。そんな姿が愛おしいのだ。
僕の書棚の引き出しには、彼らが春を待つようにかたまりあって冬眠している。まるでテントウムシのように。いつか彼らを日のあたるところで使ってやりたい。せっかく、中古カメラ店の標本箱から出してやったのだから。
投稿者 J_Sekiguchi : 2012年07月12日 10:00
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コメント
いつも拝読。読んでますよ。
露出計にきましたか。
昔、そうとう感染しておりましたが、回復。通常人レベルになりました。しかしキャリアなので、免疫があるというべきか、再発可能性が高くて危ないのか、よく分かりません。ははは。
現在、オリンパスペンのマイクロアダプターだらけで遊んでおります。旧エルマーだって、沈胴ズミクロンだって使える。16ミリシネのスイターで遊んでいる。Cマウント。もっともトップランナーとは周回遅れ以上のビギナーですけどね。
投稿者 テツオ : 2012年07月13日 08:19
露出計なんて入射光用一つ、反射光用一つあれば十分なんですけどねー。いくつもあると、どれが正しいのかわからなくなったりもしますw
デジタルカメラとマウントアダプターで旧レンズを楽しむという最近の流行、面白そうですね。やってみるかなーと思っていたら、8mmムービー用交換レンズの中古価格相場が急騰していてびっくりしました。
他にも面白い遊び方があるはず、なんていろいろ妄想しております。
投稿者 J_Sekiguchi : 2012年07月21日 15:27