STEREO CLUB TOKYO

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⑨神聖なる音色

 ヨーロッパの都市に行くと、どこでも教会を訪れるのが常になってしまった。信者ではない僕が、何故教会に行くのか?そう問われると困るのだが。写真を撮ることは別として、そこに行くことで何か日常では得られない落ち着きを得ることができる、理由としてはこんなところだろうか。実際、何をするわけでもなく、ボンヤリしているだけで落ち着く。
 そんなわけでパリの宿泊場所の近くを散歩していると、教会を見つけたので中に入ってみる。外からは一見して教会とはわからないような建物なのだが、扉を開けると高いドーム型の天井が大きく広がり、宗教画が見下ろしている。
 この教会は建物の入り口に掲げられた文字から、セント・フェルディナンド教会というのがわかる。たしか宿泊しているホテルに面した小さな通りも同じ名前だった。通りの名前に使われるぐらいだから、古くからの教会なのだろう。
 さて、中に入ると誰もいない。午前中の早い時刻だったせいだろうか。窓から日差しが差し込み、やや明るい感じのする空間は、静かで、今まで訪れた教会よりも落ち着くような気がする。端の方の椅子に座り、のんびりとする。
 すると、突然パイプオルガンが美しい曲を奏でだした。その音色は天井のドームに反響し、周囲を重厚な雰囲気で包んでいる。どうやらパイプオルガンの調整をしているらしい。驚きつつも、その音色をしばらくの間楽しんだ。
 ふと気付くと、僕のほうに歩いてくる人影がある。祭壇に一礼をしながら礼拝堂の奥から来られたのは、この教会のシスターであった。僕に何かのパンフレットを差し出し、ここでコンサートを開くので来てはどうかと言われている。
 申し出に驚きながらも、僕は明日、日本への帰路につくのだ。だが、コンサートは今晩だという。何と嬉しいことか。でも、今晩は別の用事がある。それでも、用が済んでからも間に合うだろうか・・・。シスターに礼を重ねた。(つづく)

フェルナンド通り.jpg
▲狭い通りなのにぎっしり。縦列駐車がうまいねぇ、フランス人は。

聖フェルナンド.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2012年03月01日 10:00


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