STEREO CLUB TOKYO

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初期の巻上げ機構

 リアリストのフィルム巻き上げ機構については以前に紹介したのだけど、これはラチェットを使った機構について解説したものだった。エクターレンズが付いたものなど、初期のリアリストはラチェット機構を使っていない。後ろ蓋をあけて、フィルム巻取りスプールの上のほうをよく観察すると、この機構を観察することができる。ちょっと見えづらいけどね。
 どうなっているかというと、スプールの軸に巻きバネをかぶせるようにセットしてある。上面のダイヤルを「A」にすると巻きバネが締まり、「R」にすると巻きバネが開くようになっている。巻きバネの内側は研磨がしてあって、スプールの軸にピッタリ密着するようにしてある。バネが締め付けて、スプールの回転を止めるようにしている仕組だ。
 こういう仕組だから、組み立てる時には、ダイヤルを「R」にしてバネを広げてやらないとスプールの軸が差し込めない。ちょっとした工夫がいる。また、この巻きバネの内側や、スプールの軸に錆が出ていると回転が重くなったり、回転のロックがうまくかからなかったりするだろう。摩擦を使う機構だが、ここに潤滑油が塗布してあっても滑らず、機能に影響はないようだ。
 それにしても、単純な部品でよくできた機構だと思うのだけど、どうして途中からラチェット機構に変えたのだろう。そのほかの機構はほとんど変わっていないのに、である。ここからは僕の勝手な想像なんだけど、内側を研磨する特殊なバネの製造にコストがかかっていたのではないかと思う。力をかければ容易に変形するバネを、研磨して寸法を正しく仕上げるというのは難しかったんじゃないだろうか。寸法ばらつきが大きく、歩留まりが悪かったんじゃないだろうか。
 ラチェット機構に変更し、歯車を型鍛造で作れば寸法のばらつきは少ないだろうし、多少の寸法外れがあっても、歯が欠けていなければ機能としては正しく働くはずだ。工業製品の製造現場というのは、いつの世もコストとの戦いです。

旧巻上げ.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2011年02月24日 10:00

レンズキャップを作る

 レンズキャップを探す話を書いたけど、ちょうど良いものって案外ない。寸法がちょうど良くても形がかっこ悪かったりする。いろいろ探して、どうしても良いものがなかったのがベラスコープf40のキャップ。
 さて、どうしよう。さがしても見つからないなら作ればいいじゃないか。またまた恒例の「自分で作るシリーズ」である。つまりは、蓋を作ればいいのだ。円筒にはまる蓋を。紙で作れば簡単じゃないか、ということで、初めはとりあえず紙で作ってみるという方向で進めることにした。心配なのは、何かにぶつかった時、紙だと破れてレンズに致命的な傷が入るかもしれない。ならば、何か硬い芯を入れればいい。円盤状の硬いもの。ちょうどいいものがないだろうか。
 またまた頭の中で回路が働き出す。小銭入れを覗いたら、5円玉が一枚あった。閃いてレンズ枠の上に載せるとピッタリ。これを芯にしよう。まてよ、ステレオだから二枚要る。もう一枚探すのだが、こういうときに限って出てこない。
 ようやく見つけた5円玉。“フデ五”と呼ばれる昭和20年代の古い5円玉を使うのが粋かな、と思ったのだけど、隠れてしまうので意味がない。それはさておき、やっぱり紙だと耐久性に問題がありそうなので革を使うことにした。薄手の豚革があったのでこれを使う。厚紙を切るのと同じ要領で加工ができるし、皮革用の接着剤を使えば簡単に貼り付けができる。
 革を短冊状に切り、5円玉の縁に巻きつける。円筒状になった片側にいくつもの切れ込みを入れ、内側に折り込む。円盤状に切り抜いた革を正面と裏面に貼り付ける。簡単に言うとこんな方法なんだけど、本当に簡単に出来た。
 でも現行の硬貨を使うのは法律的にどうなんだろう、と少し悩んでみる。硬貨を加工することは法律で禁じられているのだ。削ったり、溶かしていないのだから法には触れないと思うが。5円玉はスーツの裾の錘として最適とも聞くし。いいか。

レンズキャップf40.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2011年02月17日 10:00

レンズキャップを探す

 リアリストにはレンズカバーがついているから、これが壊れてしまわない限り不便はないが、他のカメラとなるとレンズキャップが付いていない場合がほとんどだ。オリジナルには付いていたのだろうけど、中古で残っているものは少ない。
 市販のレンズキャップが使えればいいのだが、レンズの方が小さすぎて合うものがない。ステレオ関係で市販のキャップが使えるといえば、ワイドレンズコンバーターのレデュフォーカスぐらい。内爪式の49mm径キャップが使える。
 そんなわけで、レンズにぴったり合うものがないか、身近なところであれこれ探すのだ。人間の集中力というのは素晴らしい。必要に迫られると意識が集中する。目に見えるいろいろなものがキャップに見えてくるのだ。キャップ状のものが目に入ると、その寸法を瞬時に目測し、使えそうかどうか頭の中で高速演算するのだ・・・疲れるね。
 そんな具合でいいものを見つけた事例を紹介しよう。まずはデルタステレオ。なんとペットボトルのキャップがピッタリ。撮影中に紛失しても大丈夫。あえて、飲料のロゴが入っているものを使うのもオシャレさんかもしれない。
 お次はベルプラスカ。貴重なツアイスレンズを保護するため、キャップはぜひ用意してあげたい。コダックのフィルムケースのキャップが使える。内側にテープを貼って、少し寸法をつめるといい。これはシグネット35にも使える方法だ。シグネットにはテープを使わなくてもピッタリ合う。キャップのどこかにエア抜きの針穴をあけておくと使いやすい。
 最後にデュプレックス・スーパー120。ダイソーで物色していると、家具の底に貼るクッション(?)があり、円形のスポンジでレンズ枠の内側寸法に合いそうだ。これと、もう少し径の大きいゴム製のクッションを組み合わせた。スポンジが縮んでレンズ枠の内側にうまく収まる。2個作って紐でつなぎ、カメラに取り付ける。工夫次第でいろいろできるよ。

キャップ.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2011年02月10日 10:00

腐海の菌を殲滅せよ

 レンズに生える厄介なカビ。見つけたときのショックは大きい。白っぽい、くねくねとした腕のような菌糸が、レンズの表面を這っている。それにしても、ガラスという無機質なものの上で、一体何を食べて生活しているのだろう。菌類の生態というのは不思議なものである。この菌は、アスペルギルスというコウジカビの仲間だという。
 こんな困った奴らだが、世の中になくてはならない存在なのだ。枯れた植物や動物の死骸などを土に還してくれるのは彼等しかいない。土中の微生物たちの役割なのだが、分解しづらいものまで片付けてくれるのは菌類だけだ。それに、人間の生活に欠かせない発酵食品を作り出すのも彼等の不思議な力の為せる技というわけだ。
 カビが生えないようにするには、常に清潔にしておくしかない。菌類は湿気が好きだというイメージがあるが、乾燥した環境を好む種類だっている。大事なのは、レンズ表面に胞子が定着しないようにすることだ。とはいっても、生えてしまったらどうしよう。クリーナーやアルコールでもきれいには取れない。ムリヤリ研磨をする人もいるようだ。
 では、僕が秘策をお教えしよう。偶然発見したのだが、酵素の力だろう、唾液をつけると菌体が溶解してきれいに除去できる。カビによる腐食の跡までは除去できないが、かなりカビが繁殖したレンズでも実用域まで回復できる。
 全くの我流だったのだが、あるTVでやっぱり有効だということがわかった。カメラの修理業をしている職人さんが、レンズに生えたカビを簡単に取りますという。あろうことか、手に持ったレンズの玉を口の中に放り入れた。もぐもぐした後に取り出し、布で拭いてハイ出来上がり。なんとまあ、カビを食べちゃったわけだ。
 口に入れるかどうかは別として、この方法でカビを除去した後はクリーナーでよく清掃しておいてください。

レンズをかもすぞ.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2011年02月03日 10:00