STEREO CLUB TOKYO

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洋行帰りのカメラたち

 子供の頃から身近にカメラがあった。フィルムを入れることはなかったが、いつもおもちゃにして遊んでいたカメラがある。PAX Rubyというカメラ。小さいがずしりと重く、しっかりした作りのカメラだ。だが、おもちゃ箱の中にレンズキャップも付けずに放り込んでいた。レンズの前玉は傷だらけ。なんともかわいそうなカメラ。なんとひどい僕。
 その他のたくさんのおもちゃはいつの間にかいなくなったのだけど、このカメラだけは手元に残っていた。ちょっと絞り環の動きが良くないのだけど、機械はしっかりと動いている。あるとき、レンズの傷を承知でフィルムを入れた。
 撮影したのは、僕がもう、一人で稼げるようになった頃の日常の風景。プリントすると、そこには傷の効果で、ソフトフォーカスで撮った様な、不思議な、だけど温かみのある風景があった。どこにも行かずにいてくれたカメラに感謝した。
 そんなわけで、このカメラの素性が妙に気になりだした。だが、調べてもあまり資料が出てこない。やっとの思いで判ったのは、大和光機工業という会社の、海外輸出専用のカメラだったのだ。そのため国内ではあまり流通していない。
 あるとき、松屋の中古カメラ市にうっかり足を踏み入れて、もう一台を手に入れることになった。あまり見かけない機種であったのと、きれいなレンズに惹かれてしまったのだ。たぶん、この市にたった1台だけの存在だったのではないか。
 家に帰って、シャッターの感触を楽しんでいてふと気付く。同じカメラが2台あるのだから、ステレオにできるではないか。小さいボディは並べてもコンパクト。だけど、一つはレンズが傷だらけだ。あれこれ考えているうち、輸出用ならebayで手に入るのでは?とひらめいて、とうとうもう一台を手に入れてしまった。まだステレオ撮影はしていないが、このカメラたちに愛称を与えたいと思う。とんきち、ちんぺい、かんた。生き別れの、同じ工場で生まれた三兄弟である。

PAX.jpg

投稿者 J_Sekiguchi : 2011年09月22日 10:00


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