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⑤郊外へ
首都ストックホルムから列車に乗って郊外に出ると、周りの風景が一変する。北欧の水の都とも称されるように、ストックホルムはたくさんの島からなるが、北の方に行くにしたがい、針葉樹の深い森に囲まれてゆく。この風景、北海道の原野に似ている。地平線の先まで、どこまで行っても森が広がっている。これが北欧の風景か。
列車は森の中を、風を切り裂くように突進する。客車はガタゴトと大きく揺れながら機関車に引かれてゆく。北国の大地を進むには、これぐらいの力強さが必要なのかもしれない。いくつかの小さな町を通り過ぎ、目的地に着く。
ここに来たのは観光ではなく、仕事の用事で来たのだ。大きな工場が立ち並ぶ街にやって来たのだが、日本の工業地帯とはだいぶ趣が違う。針葉樹の森の中に、手入のされた庭が広がって、この中に工場がある。そんな雰囲気なのだ。
工場の内部というのは、被写体としてはとても魅力的だ。だが、多くの工場は、写真撮影はおろか、カメラの持込さえも制限されている。それが常識なのだ。物作りのノウハウは工場のいろいろなところにちりばめられている。ライバルであれば、どんな工夫がされているか、写真を見るだけで察知してしまうだろう。だから、写真を撮ることは絶対ダメ。
それでもいつか許されるならば。モノクロームのフィルムで工場の写真集など作ってみたい。そう思うほど、物作りの現場は魅力にあふれているのだ。働く人の真剣なまなざしはいい絵になるはずだ。・・・まあ、かなわぬ夢だろう。
工場の近くに設けられたゲストハウスに宿泊したのだが、ここから見る景色が素晴らしい。会社の敷地には緑があふれ、よく手入がされている。休日には散歩を楽しむ人も多いと聞く。ようやく夕日が空を染めだした頃は夜の8時をまわろうかというころ。遅い散歩を楽しんでいると、藪の中からのウサギがこちらを覗いていた。(つづく)
▲電気機関車に引かれてゆく
▲北欧の森
投稿者 J_Sekiguchi : 2011年08月18日 10:00
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