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初期の巻上げ機構
リアリストのフィルム巻き上げ機構については以前に紹介したのだけど、これはラチェットを使った機構について解説したものだった。エクターレンズが付いたものなど、初期のリアリストはラチェット機構を使っていない。後ろ蓋をあけて、フィルム巻取りスプールの上のほうをよく観察すると、この機構を観察することができる。ちょっと見えづらいけどね。
どうなっているかというと、スプールの軸に巻きバネをかぶせるようにセットしてある。上面のダイヤルを「A」にすると巻きバネが締まり、「R」にすると巻きバネが開くようになっている。巻きバネの内側は研磨がしてあって、スプールの軸にピッタリ密着するようにしてある。バネが締め付けて、スプールの回転を止めるようにしている仕組だ。
こういう仕組だから、組み立てる時には、ダイヤルを「R」にしてバネを広げてやらないとスプールの軸が差し込めない。ちょっとした工夫がいる。また、この巻きバネの内側や、スプールの軸に錆が出ていると回転が重くなったり、回転のロックがうまくかからなかったりするだろう。摩擦を使う機構だが、ここに潤滑油が塗布してあっても滑らず、機能に影響はないようだ。
それにしても、単純な部品でよくできた機構だと思うのだけど、どうして途中からラチェット機構に変えたのだろう。そのほかの機構はほとんど変わっていないのに、である。ここからは僕の勝手な想像なんだけど、内側を研磨する特殊なバネの製造にコストがかかっていたのではないかと思う。力をかければ容易に変形するバネを、研磨して寸法を正しく仕上げるというのは難しかったんじゃないだろうか。寸法ばらつきが大きく、歩留まりが悪かったんじゃないだろうか。
ラチェット機構に変更し、歯車を型鍛造で作れば寸法のばらつきは少ないだろうし、多少の寸法外れがあっても、歯が欠けていなければ機能としては正しく働くはずだ。工業製品の製造現場というのは、いつの世もコストとの戦いです。
投稿者 J_Sekiguchi : 2011年02月24日 10:00
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