STEREO CLUB TOKYO

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鍾乳洞探検

 一度でいいから行ってみたかった、山口県の秋芳洞。図鑑で見る秋芳洞の千枚皿や、巨大な鍾乳石は、平面の写真でありながら不思議な雰囲気と美しさを伝えてくた。人間の手が一切加えられていない、自然の力のみで作られた神秘の世界。これを間近で見たらどんなに素晴しいだろう。少年のころの思いがやっとかなう時が来た。洞窟に一歩入ると、不思議な世界が広がる。
 これをステレオ撮影するために、リアリストに大型のストロボをセットすることにした。大型といってもガイドナンバー36だからそんなに大きいわけじゃない。でも、最近のカメラ内蔵型のストロボが当たり前に見えてくると、なんとも巨大なものに見えてくる。このストロボはパナソニックがまだナショナルだったころのもので、海外にも大いに輸出されたもの。国内で販売されていたものを持っていたが、シューの部分が破損したので同じものをebayで手に入れたのだ。
 さて、鍾乳洞とか洞窟というものは、年間を通じて気温があまり変化しない。夏場だとひんやりと涼しい。しかし湿度は異常に高い。天井からも水滴がポタリと落ちてくる。この水滴が鍾乳洞の中の神秘的な造形を生み出したモトなんである。水滴の中の成分が不思議な造形を作っている。
 しかしこの湿度、電気製品には酷な環境だろう、と思っていた矢先にストロボが発光しなくなった。マズイ!と思っていたら内部から破裂音がしていやな臭いが。。。ああ、またコンデンサーのヤツが!!
 これ以上使っていたら何が起こるかわからない。電池を抜いてバッグに放り込む。しかし鍾乳洞の中に照明があるものの、撮影には暗すぎる。ううむ。ストロボ無しではどうにもならない。しばらくの後、もう一度だめもとで電池を入れてみた・・・おおっ。動くぢゃぁないか。購入した相手の英国人は長年使っていなかったのだろう。中にホコリでも溜まり、それが湿気を吸い、高電圧がかかってショートしたのかも。というわけで、ちょっとビビリながらであったが、無事神秘の世界の撮影を終えた。

千枚皿.jpg

投稿者 sekiguchi : 2010年04月30日 10:00

暗視装置

 暗視装置と言っても、スパイ映画に出てくるような光を増幅する装置じゃない。前に紹介した自作のマクロステレオカメラだけど、レンズの絞りが固定なので薄暗くなるとピント合わせがまったくできなくなる。被写体までの距離を測ってカメラをセットすればいいのだけれど、動き回る被写体とか、昆虫や小動物のように逃げてしまう被写体には使えない方法だ。
 ピントを合わせる間だけ、被写体をライトで照らしてやればいいのだが。露光の邪魔になるので、シャッターを開けるときはこのライトはOFFにしなければならない。カメラを構えたまま、一連の撮影動作でライトのスイッチ操作をやるのはムリ。そこで考えたのが、カメラのシャッターボタンに押しスイッチを付けて、このスイッチを押している間はライトがOFFになるような仕組み。ライトをOFFにするスイッチをシャッターと一緒に押し込めば、撮影動作の中にライトの消灯動作を組み入れることができる、というわけ。
 早速、秋葉原に行って部品の調達だ。一番肝心なのはライト。懐中電灯程度のものでいいのだが、発光する部分がコンパクトじゃないといけない。これがなかなかいいものが無く、途方にくれていると安売り雑貨屋の店頭に粗末な懐中電灯が売っていた。1個100円なり。なぜか電球の部分が中途半端なフレキシブルになっていたが、これが使える。
 このライトを適当に切断し、電池やリレー、スイッチを収納したボックスに無理やりエポキシ接着剤で取り付けた。このボックスはマミヤ645の三脚ネジ穴を利用して、カメラの底部にしっかり固定できるように作っている。ちょっと仰々しい姿になったが、薄暗いところでの撮影に絶大な威力があるカメラに変身した。暗闇でもピント合わせが簡単にできるのだ。
 目下の目標は、暗くなると出てくるヤモリの撮影に使おうと思っている。でも、ヤモリにも行動範囲があるのか、屋根の端っこのほうにしか出てこないのでなかなか撮影の機会に恵まれない。

ライトユニットA.JPG ライトユニット.JPG

投稿者 sekiguchi : 2010年04月27日 10:00

カマキリ・ファイト

 秋口になると、草むらでカマキリの卵を見つけたものだ。子どもの頃はその形の面白さから採集したりもしたが、最近の子供たちはカマキリの卵を知っているだろうか。大人になった今では採集することなどないが、僕が子供の頃の話。葦の茎に産み付けられたオオカマキリの卵を採ってきた。それを、部屋のどこかに置いたままうっかり忘れてしまった。その後の顛末を紹介しよう。
 春先になり、だいぶ暖かくなってきたある日、部屋のあちこちに小さなカマキリがいるのだ。初めは外から迷い込んできたのだと思ったが、あまりに数が多い。気味がわるくなって良く考えると、外から持ち込んだ卵を棚の奥に置きっぱなしだったことに気がついた。あわてて手にとっても遅い。スポンジ状の卵殻はすでに中身が空っぽだ。
 そんな悪夢のような、忘れていた思い出は、マクロステレオカメラを持ってフィールドに出たときに。初夏にさしかかろうという季節、大きくなり始めた草木の葉に、あの小さなカマキリがいるのを見つけた。まだ小さく、生まれてからさほど経っていないに違いない。あの時部屋にいた、たくさんの子カマキリたちの姿が脳裏に浮かんでくる。
 ということは、この近くにまだたくさんいるはずだ。一匹見つけたら百匹はいる。どこかで聞いたようなフレーズが浮かんでくる。草木の葉の隅々を観察すると・・・いるいる。たくさんの子カマキリがいる。だが、卵から生まれた兄弟たちはもっと数が多かったに違いない。彼らは生まれてすぐの頃は共食いをするのだと聞いたことがある。
 レンズを向けるとこちらの動きを察知して逃げる。葉の表にいたヤツが、サッと葉の裏側に回りこむ。しかし、逃げた先には先客がいた。たぶんコイツの兄弟だ。お互いに睨み合い、ファイティングポーズをとったまま動かなくなった。さあ、どちらが先に仕掛けるか・・・シャッターを切った後、僕がレフェリーになって片方を別の葉に追いやった。やれやれ。

カマキリ.jpg

投稿者 sekiguchi : 2010年04月23日 10:00

単体距離計

 僕は目測というのが嫌いだ。日中の屋外で絞りを十分に絞っているから、適当にフォーカスをあわせておいても大丈夫。という状況でも距離計を使わないと落ち着かない。手を抜いているような気がしてしょうがないのだ。これがビューマスターパーソナルのように、フォーカスダイヤルがもともとありません、という状況なら諦めて使うのだけどね。だけど、フォーカスダイヤルが付いているのに距離計がない、というのはどうしてもダメである。第一、機械として面白くない。
 そんな距離計の付いていない代表格がベルプラスカだろう。このカメラ、フォーカスダイヤルを回すとそれに連動してビューファインダーの視野が動き、パララックス補正をするようになっている。そこまで凝った機能を持っているなら、距離計ぐらい付けておいたらどうなんだ。と怒ったってしょうがない。単体の距離計を探してくればいいのだ。
 単体距離計は二つの窓を持った箱型の構造で、アイピースを覗くとそれぞれの窓から入った風景が見える。覗きながらダイヤルを回すと内部のミラーが動いて、二つの像が合う。このときのダイヤル指標で距離を知るというもの。この距離にあわせてカメラのフォーカスダイヤルを操作する。小さくてカメラのアクセサリーシューに取り付けられるものがいい。
 気をつけなきゃならないのは、距離表示はメートルとフィートの2種類がある。カメラと距離計は同じ単位系にしておかなければ使いづらい。ベルプラスカはメートル系だったので、メートル表示の距離計を探した。もちろん中古で。
 欲しいとなるとなかなか見つからない。あちこち歩いて、やっと上野のお店で見つけた。なぜかこれにはアイピースが二つある。何だろ?と思って手に取ると、光学式の露出計であった。ここを覗いて一番暗く見える数字を探し、上にあるダイヤルでシャッターと絞りを選定する。面白いものを見つけた。ベルプラスカにぴったり。よしよし。

距離計.jpg

投稿者 sekiguchi : 2010年04月20日 10:00 | コメント (2)

飛行機を見に行こう

 世の中に交通機関は数あれど、空を飛ぶものは乗ることはあっても手が触れるような間近で見ることは少ないだろう。空港に行って旅客機を見ることはできても、エンジンの中を覗き込んだりすることはできない。でも、航空機を展示している場所だったらできるのではないか。そう、自衛隊の一般公開がこんな望みをかなえてくれる。航空機だから航空自衛隊かというと、空自は飛行展示がメインであり、着陸している機体には近づけない。陸自は車輌がメインで、航空機となるとヘリコプターが若干展示されるのみ。ヘリもいいけどやっぱりジェット機がいい。となるとお勧めなのが海自の下総基地だ。
 ここは海上自衛隊の直轄部隊であり、教育航空集団を構成する組織なのだ。航空機に係わる隊員たちの教育を行っている。ここも他の駐屯地と同様、記念行事として年に一回の一般公開をしている。戦闘機こそはないものの、様々な用途の航空機が集まり、展示されている。これがまた、手に触れることができるほどに間近で見ることができる。もちろん、オ手ヲ触レナイデクダサイとういことなんだけど。ステレオで撮影すると、本当に触れることができるのではという感じが伝わるかな。ヘリコプターのプロペラなんかはステレオで撮ると面白い。マウントのときに、わざとステレオウインドウより手前になるように左右画面を調整する。そうすると「飛び出る」ステレオ写真になる。これはオモシロイよ。
 航空機を眺めるだけでなく、基地内では様々なイベントが実施されるのでこれを見るのも楽しい。時間の経つのもあっという間で終わりの時刻になり、そろそろ引き上げようかという頃。名残惜しいなぁと思っていたら、展示の航空機達が順番に飛び立ち、元の所属に帰ってゆくではないか。さっきまで近くで見ていた機体が飛び立ってゆくのである。これには感動した。バンクで翼を振り、去ってゆく。やっぱり、航空機は飛んでゆくところを見送らねばしっくりこないものだ

航空機1.jpg

航空機2.jpg

投稿者 sekiguchi : 2010年04月16日 10:00

ミドリの恐怖

 春先の森や雑木林に行くと、木々の新芽や、つつじのつぼみが膨らみだしている。落ち葉で覆われた地面からも、ところどころ草の芽が出始めている。真夏になると藪に覆われてしまうところも、春先ならいやな虫に会わずに奥のほうまで入ってゆける。カメラを持って、何か面白い題材はないかと散策をしたときのことである。
 この日にカメラに装てんしたフィルムは、当時新しく期間限定で発売されたフジのフォルティア。従来のフィルムより鮮やかで、原色が際立って表現されると聞き、興味津々で初めて使ったのだ。こういうのが出てくるというのは本当に嬉しい。フィルムの種類が減ってゆく中、新しいフィルムを出してくれることに感謝している。
 さて、近所の山に行ってみる。どうということのない山であるが、とりあえず遊歩道がある。あちこちにもう花が咲いている。地面にはスミレが群生していて、小さな紫の花がたくさん咲いている。こういうのはもうだいぶ撮ったので、もうちょっと変わったものがないものか。見たこともないような、不思議な生物に出会えないものかと森の奥のほうに入ってみる。
 しばらく歩くと、道が手入れされていない、苔むした感じになってきた。倒木が道をふさいでそのままのところもある。なかなかイイ感じにワイルドになってきた。もっと進むと、どうやって進めばいいんだ?というような道なき道になってしまい、こんなところで遭難?という思いがよぎる。ついには湧き水が沢になった場所に出くわし、進めなくなった。
 足元を見ると、シダの仲間が生い茂っている。新芽がゼンマイのように巻いている。この形、よく見るととても不思議だ。突然開いて、襲われるのではないかというような不気味な形でもある。これをステレオで撮る。
 現像すると、フォルティアは緑の発色が濃く、独特だった。意図した以上に不思議な生物感が溢れる仕上がりになった。

シダの芽1.jpg

シダの芽2.jpg

投稿者 sekiguchi : 2010年04月13日 10:00

ロケット基地の見学

 日本のロケット打ち上げ場は2箇所ある。鹿児島県の大隈半島にある内之浦宇宙空間観測所と種子島宇宙センターだ。どちらもだいぶ前に見学に行ったのだが、内之浦のほうは撮影をしなかった。してはいけなかったのか、勝手に遠慮したのか覚えていないが、普通は入れない施設の中も見せていただいた。古い建物の片隅にニキシー管表示の制御装置か何かがあってとても興味深いものがあった。日本ではじめて人工衛星を打ち上げ「おおすみ」と名付けたのは、打ち上げ場所のあるこの半島の名前から取っている。その頃の装置かと思うようなものが置いてある一方で、別棟では最新の電子機器が使われている。小ぢんまりとした感じでありながら、日本の宇宙開発の歴史を感じさせてくれる場所である。
 種子島に渡って、宇宙センターではH-Ⅱロケットの発射台を見学した。内之浦の固体ロケットとは違い、大型の液体燃料ロケットを発射する場所であるため発射台にも工夫がある。ロケット噴射を受け止める部分はコンクリート製の大きな水槽になっていて、燃焼ガスの威力を受け止める仕組になっている。実際にロケットがセットされていれば相当な迫力であろう。発射台だけでも、ここから宇宙に飛び立つのに必要な多くの課題を克服するための工夫が盛り込まれている。
 さて、種子島といえば鉄砲伝来の島である。異国の技術を基にしているとはいえ、日本の鍛造技術があってこそ鉄砲を国内で作ることができたのだ。今でも種子島には昔からの鍛冶屋さんがおり、鋏などの製造をしている。鋏を一丁購入させていただき、作業の様子を見学させていただいた。ふいごの炭火で真っ赤に加熱された鋼を、ハンマーでたたいて命を吹き込む。硬い刃先と持ち手の鋼をつなぎ合わせる。あわせ面に硼砂と砂鉄を混ぜたものを挟むそうである。ハンマーをひと振り。飛び散る火の粉が美しい。物造りの素晴しさを感じる一瞬である。

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投稿者 sekiguchi : 2010年04月09日 10:00

2回撮りマクロ

 マクロでステレオを撮るというのはオモシロイものである。それにしても、なぜ「マクロ」と言うのだろう。辞書で調べると「マクロ経済学」なんていうのが出てくる。この場合の意味は「経済を巨視的に見る・・・」なんて書いてある。ええっ?巨視的に見るって、マクロ写真の意味には当てはまらないんじゃないの?ミクロ写真とか、ミクロレンズって言ったほうがぴったりなんぢゃねぇの?と、頭の中が混乱してくる。
 どうやら、被写体を拡大して撮影するという意味で、拡大の意味を持つ「マクロ」を冠しているらしい。拡大写真、拡大レンズ。なるほど。そうなると、「マクロ・ステレオ」と言うならば、フィルム上で等倍以上の画像が得られるべきではないか、というわけで、強力に拡大したステレオ写真を撮影してみることにした。
 拡大率を大きくしながら画面サイズを確保したステレオカメラというのは、構造的に作るのが難しい。一眼レフに接写レンズをつけて、カメラか被写体を左右にずらして2枚撮り、視差を得るというやり方が簡単だ。どのくらいずらせば良いかというのはやってみて確かめるしかなさそうだ。被写体が勝手に動いては困るので、室内で動かないものを対象にした。
 接写専用のレンズが手元になかったので、一眼レフに標準レンズを接写リングを介してリバースで取り付ける。レンズの前玉がフィルムのほうを向くように取り付けるのだ。こうしたほうが強拡大の場合はいい結果が得られる。絞りを最小にして、被写界深度をかせぐが、それでもピントの合う範囲はごく薄くなる。暗くなったピントグラスがとても見えにくい。
 今回は被写体をわずかに5mmほど左にずらしてみた。現像すると同じようなコマが二つ並んでいるだけのように見える。マウント前に裸眼の平行法で確認してみると、確かに立体になっている。これはオモシロイ。

2回撮りマクロ.jpg

投稿者 sekiguchi : 2010年04月06日 10:00

てんとう虫 

 飛んでいる昆虫を撮影するのはとても難しい。動きが素早く、予測不可能な動きをするからだ。マクロカメラの薄暗い、焦点の浅いファインダーで追いかけて撮影するのはとても大変だ。ハエを箸で掴むようなものだ。だから飛び立つ瞬間を待ち伏せで撮る。甲虫の場合は、羽を広げて飛ぶまでフォーカスを合わせて待ち伏せて撮る。この甲虫を撮るのが大変。
 カブトムシやカミキリムシがいつ飛び立つかなんて予測がつかない。待ち伏せているあいだも動き回るので追いかけるのが大変。そんな中でも、テントウムシのように棒の先端に登りきったところで飛び立つ習性を持つものはまだ撮りやすい。それでも、わざわざ棒を立てて撮影するのも無粋だなあ、ということで、草むらの中で動き回るテントウムシを追いかける。
 葉の先端に行ったところで飛ぶかな?と予想をつけてカメラを構える。でもそのまま折り返して、違うところに行ってしまうことも多い。そんなことを繰り返しているうち、運よく飛び立つことがあるのだが、こっちはあわててしまう。シャッターを切った瞬間にはフレームの外に飛んでいってしまっていることのほうが多いのだ。
 そんな苦労の末、なんとかフレーム内に納まったものがある。テントウムシは外側の羽を大きく広げ、内側の薄い羽を羽ばたかせているのがわかる。飛しょうの光跡が尾を引いている。おや?この光跡、テントウムシの頭側から伸びている。
 バックしながら飛んでいるわけではない。マクロカメラのベースとなったマミヤ645のストロボシンクロは、先幕シンクロといって、シャッターが全開した瞬間にストロボが発光するようになっている。一般的なフォーカルプレーンシャッターは全部先幕シンクロだ。シャッターが閉じ始めた瞬間にシンクロする後幕式ならテントウムシの後に光跡が伸びるように写るのだが。
 いつかマミヤ645を改造して後幕シンクロを増設してやろうと思うのだが、壊れても困るので躊躇しているところ。

てんとう虫.jpg

投稿者 sekiguchi : 2010年04月02日 10:00