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闇に光る太陽
皆既日食当日。朝を迎えてあまり天候が良くない。前日まで観光三昧で、結構楽しんでいたせいもあって、僕はぐっすり寝ていたのだが。天気が気になる人はあまりよく寝られなかったらしい。深夜から天候が急変し、明け方前にはにわか雨と雷があったようなのだ。こんな場面に遭遇したら気が気ではないであろう。気にしたって晴れるわけではないのだが。
観測場所は湖に面したホテルの庭だ。芝生になっていて、視界が開けている。場所としては申し分ない。天候は徐々に回復し、雲がだんだん薄くなってきている。これなら期待が持てそうだ。皆既日食の時間帯はランチタイムと重なるので、ホテルのスタッフがいつでも昼食を取れるよう、庭に用意をしてくれている。太陽が欠け始める。ここからが長い。
太陽が徐々に細くなってゆく。月が覆いかぶさるように太陽を隠してゆく。辺りがだんだんと暗くなり、気温も少し低下してきている感じがする。待ちわびて、まもなく月が完全に太陽を隠す時がきた。まだ少し、薄い雲が流れている。
細く細く、もう点のように小さくなった太陽だが、それでも強烈な光を放っている。そして完全に月が覆いかぶさるほんの少し前、黒い太陽の周りにコロナが輝きだした。周りから歓声が沸き起こる。薄い雲を通してはいるが、コロナの輝きは意外にも力強い。活動の極大期を迎えた太陽のコロナは大きく輝いている。記憶に刻むよう、じっと見つめる。
黒い太陽の縁にピンク色の輝きが見えた。プロミネンスである。肉眼で見るプロミネンスは赤よりも明るく、美しい。ふと辺りを見回すと、周囲は闇に包まれ、月明かり程度のコロナの光りだけで照らされている。地平線の彼方がオレンジ色に輝いている。黒い太陽の周りにはいくつかの惑星と恒星が輝いている。神が創った奇跡の光景に出会えたことに感謝する。
程なくして、太陽は力強い輝きを取り戻し始めた。旅の大きな目的の一つが今、終わりを迎えたのだ。(つづく)
投稿者 J_Sekiguchi : 2010年12月20日 10:00
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