« 2009年09月 | メイン | 2009年11月 »
日食の撮影
赤瀬川源平さんの本を読んだら、ステレオグラフィックでメキシコ皆既日食を撮影した顛末が書かれていた。これには驚いた。僕はその本を読む前に東欧に皆既日食を見に行っていたのだ。しかもリアリストを持って。しかも、ステレオならではの近景を取り込んだ太陽の撮影をしなかった。なんで日食を見に行く前に本を読まなかったのだ。何でステレオで撮らなかったのだ?
とは言え、皆既日食は素晴しかった。感動した。少し薄い雲を通しての皆既日食だったけど、それでも素晴しく美しかった。写真では表現できない、コロナの微妙なグラデーションは生の目で見るに限る。写真はおまけ。そうは言っても、おまけでもいいから、ちゃんとステレオで撮っていたらいいものになっていたんじゃないか。やっぱり、何で撮らなかったのだ?
皆既日食を一回見てしまうと、もう一回見たくなるらしい。自分もそうである。うす雲がかかっていたからとか、ステレオでちゃんと撮っていなかったからとか、いろいろ理由を見つけてもう一回いくのである。というわけでもう一回行った。場所はアフリカ。
二回目は、ちゃんとどんな撮影をするか決めて機材の準備をした。あれこれ手を広げすぎると良い結果は得られない。ステレオ以外にも望遠で撮影したが、これは中古のEOS10Dに任せた。インターバル撮影が無人でできるから、セットして全ておまかせ。太陽が全て隠れている時間は約3分間。この間はステレオ撮影と肉眼での鑑賞に専念するためだ。
それでも、ステレオ撮影より自分の眼で見ることが優先。撮影はあらかじめ段階露出の設定をして、枚数も決めておいた。それ以上は撮らない。欲張ると失敗する。効率を良くするため、2台のリアリストをそれぞれ三脚に乗せてレリーズを取り付ける。巻上げとチャージをして、2台同時にレリーズ。露出時間を変えてもう一回。これを何度も事前に練習して、体にリズムで覚えさせる。そうやって、そのときの感動がよみがえる写真が撮れた・・・そのうちまた、もう一回見に行くかも知れない。
(空の階調がうまく取り込めないので雰囲気だけでもお楽しみ下さい)
投稿者 sekiguchi : 2009年10月30日 23:43
モーターショー
幕張にて隔年で開かれる東京モーターショーは、自動車メーカー各社の最先端技術を見ることができる。どこのブースも工夫を凝らした展示やパフォーマンスがされていて面白い。毎回楽しみにしていたのだが、景気低迷の世の中に突入して以来、近未来的な夢のある車の展示がずいぶんと減ってちょっと寂しくなってしまった。今年の出展会社もだいぶ減るようである。そんなわけでここ何年も行っていない。お祭り好きの僕としては、こういうイベントは派手であって欲しい。
さて、ピカピカに磨かれたカッコイイ車をステレオで撮るとこれがとてもイイのであるが、屋内の展示であるし、多種類の照明が光源になっている環境では撮影が難しいと感じる人も多いだろう。実際にはそれほど迷うことはなく、普通のデイライトタイプのフィルムを使い、ストロボを補助光源にすればカラーバランスを崩すことなくよい結果が得られる。人工的な光源だからということでタングステンタイプのフィルムを使うと不自然に青みが強くなってしまう。ハロゲンランプなど色温度が高めの光源が多いのでデイライトタイプのほうがマッチするのだ。
ステレオで撮影して気付くのが、車のボディに反射する光源の光点は左右の目で大きな視差があり、ちらつきという形でメタリックな質感が伝わってくる。普通の平面写真になるとこの光点はただの白い点として表現されてしまうのだが、ステレオではキラキラと光って見えるのだ。会場の臨場感が伝わってきて、写真として非常に面白い仕上がりになる。
こういうイベントにはコンパニオンのおねいさんがタクサンいて、カメラ小僧さんたちもタクサンいる。この状況で撮影するというのもそれはそれで面白いんだけど、ちょっと気恥ずかしいものでもある。だからこういうイベントはパーッとお祭りの雰囲気にして欲しいわけだ。世界経済がリーマンショックから立ち直り、早々に活況を呈するよう心から願っている。
投稿者 sekiguchi : 2009年10月23日 23:12
モノクロスライド
ポジフィルムでステレオ鑑賞する、この方法は一番臨場感がある。ポジフィルムと一口に言ってもいろいろな銘柄があるけど、フィルムによって色の出方とかコントラストが違う。普段使い慣れているものから別の銘柄に変えると、新しい描写に感動したり、逆にがっかりということもある。自分の感覚にあったフィルムが見つかると撮影も楽しい。
カラー写真だけでなく、モノクロの世界というのも味わいがある。だけど、モノクロのポジフィルムというのはかなり特殊な分野になるみたいだ。かつてはアグファからスカーラ200が発売されていた。感度設定がある程度自由にできて、現像のときに感度指定をする。専用の現像プロセスだから普通のリバーサル現像とは一緒にできない。料金も割高だった。
このフィルムを使って何回かステレオ撮影をしたけど、その仕上がりにはちょっと癖になりそうなところがあった。カラーにはない感動がある。次はどんな題材で撮ろうかと考えているうちにフィルム販売と現像受付が終了してしまった。そんなわけで今でも我が家の冷蔵庫には4本のスカーラたちが寝ている。
今でも海外のどこかでスカーラの現像をしているという噂も聞く。そんな気の遠くなるような手間をなくしてモノクロポジで撮れないだろうか。普通にネガで撮り、ネガフィルムにコンタクトプリントしてポジを得る。最もオーソドックスな方法だけど、これも手間がかかるし画質がどうしても劣化する。モノクロネガを現像の段階で反転する方法もある。だけど廃液の処理が面倒な危険な薬品が必要だ。環境にやさしく、安全な方法はないものか。
さらに深く調べると、モノクロ現像でポジが得られるフィルムがある。ローライスライドダイレクト。ヨーロッパで売られているらしいが国内ではまだ販売されていない。あまり情報がないのだけど、早く入手できる環境になって欲しいものだ。
投稿者 sekiguchi : 2009年10月17日 00:30
日付機能
今では当たり前の、写真に日付を写しこむシステム。世の中に登場したときは新鮮だった。フィルムの場合、初めの頃の写しこみ方法は、フィルムの裏からランプで照射していた。だから日付の色調も黄色もしくは赤に近い文字だった。これがしばらくすると、フィルム巻上げのときに連動してフィルムの表からドットの点滅で照射するものにまでなった。
一眼レフ用の初期のものはシンクロ接点を利用してランプを発光させ、マスクを通してフィルムの裏から文字を写しこむものだった。レリーズと同時に映し込むことができるので、小さなアナログ時計を組み込んで撮影時の時・分・秒が記録できるものまであった。いずれも裏蓋を交換して使う。
リアリストのほか、多くのステレオカメラは裏蓋が取り外し式だ。ここをうまく改造したら、フィルムの裏から文字を写しこめるシステムができるんじゃないだろうか。左右の画面の両方に同じように入れるとなると、かなり面倒くさい改造になる。こんなアホなことを考えているが、まだ実行していない。
デジタルなら何でもありなんだろうけど、制限のあるフィルムだからあれこれ考えるところに面白さがある。だいぶ前になるが、「こち亀」で両津勘吉巡査が「写ルンです」の中に細工をし、文字が写しこめるようにする話があったように思う。この話は面白かった。もう一回読もうと思っても、コミックスの何巻に収録されているのかわからない。「こち亀」ではステレオカメラが出てくる話もあった。これは何巻だったかな。何しろ160巻を越えているから探すのは大変だ。
次はどんなことができるかなと、工夫するのはとても面白い。なんでも簡単に済ませてしまうのでは面白くない。漫画みたいな自由な発想は、新しいアイデアを創造する方法の一つだ。
PENTAX MXのダイヤルデータバック。年のダイヤルは’88までしかない。
投稿者 sekiguchi : 2009年10月09日 23:40
フィルムの調達
今から20年ほど前、僕がまだステレオカメラを持っていなかった頃、ほんの少しだけ北海道の某地方都市に住んでいたことがある。当時は6×7判のプラウベルマキナに凝っていて、リバーサルフィルムで大自然を撮影することが楽しみだった。ブローニーのリバーサルなんて札幌に行かなければ買えないので、近所の写真屋さんにあらかじめ頼んでおいて、やっと一週間後に届くという状況だった。現像だって札幌送りだから一週間以上かかる。これが当たり前だった。
あるとき、富良野や美瑛の大自然を撮りに行こうと、機材を車に積んで一人旅に出かけた。宿は行き当たりばったりで決める気ままな旅である。雄大な大自然と美しい風景に、ついシャッターの回数が多くなる。120のブローニーしか使えないマキナ67は、1ロール10カットしか撮影できない。あっという間に手持ちのフィルムを使い切った。しまった!もっと買っておくんだった。とりあえず写真屋に行けばネガフィルムぐらいはあるかもしれない。そう思って美瑛の国道沿いの小さな写真店に飛び込んだ。小さな店だったが、ブローニーを置いてあるか?と聞くとあると言う。リバーサルは?と聞くと、何本ですかとたずねられた。驚いた。多くの写真家が撮影に来るので、主要なフィルムは豊富に置いてあるのだ。
同じようなことが昔、ハンガリーで。うっかり予備のフィルムをホテルに置いたままステレオ撮影の散歩に出かけた。戻るのも面倒なので、たまたま通りにあった小さな写真店に飛び込んだ。英語が通じない。リバーサル、スライドと言っても通じない。ポジフィルムと言ってようやく通じ、今は無きコニカのフィルムが出てきた。やっぱり外国人はポジをよく使うのだろうか、と思った。需要のあるところにはちゃんと置いてあるものなのだ。それにしても、このときのコニカのフィルムは地味な発色で粒子が粗かったなぁ。手に入らなくなっちゃうと、無性に懐かしくてまた使いたくなってしまうものだ。
投稿者 sekiguchi : 2009年10月03日 21:40