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鉱山都市
日本ではもう大きな炭鉱や金属資源を採掘する鉱山はなくなってしまった。坑道を掘り進んで、真っ暗な洞穴から鉱石を採掘する、そんな鉱山はほとんど閉山となっている。これらの鉱山は、今から50年ぐらい前はとても栄えていた。
鉱山で働く人、採掘のための機械を用立てる会社、掘り出した鉱石を運搬する鉄道、そんな鉱山に関係する会社や人々が集まり、大きな町が形成されたのだ。学校や病院など、働く人々と家族を含めた生活の基盤がどんどん整備され、大きな都市へと発展していった。海外との交流も鉱山技術を軸にして活発になり、当時の東京よりアカデミックであったとも聞く。
だが、鉱山に支えられているからこそ、操業が滞りだすと衰退の一途を辿る。鉱石を掘り尽さないまでも、採算が合わない状態になると操業を落とさざるを得ない。金属価格の変動、海外からの資源流入、需要の変化など様々な要因が影響し、最盛期から短期間のうちに消滅した都市もいくつかある。そのまま置き忘れたような廃墟が残ってしまっている。
神岡鉱山がそんな鉱山都市のひとつだ。今では廃坑を利用したカミオカンデなど、学術研究への活用が盛んだが、栃洞坑の周りに広がっていた町全体は巨大な廃墟となっている。廃墟マニアと呼ばれる人達にはたまらないものがあるらしい。だが、朽ち果てた構造物は少しずつ崩れている。危険な場所もあるだろう。探検はせず、見える範囲で様子を窺った。
この場所がどのような経緯で廃墟と化したのか想像もつかない。もうすでに機能していないそれらを見るに、規模の大きさに驚く一方、悲しみが伝わってくる。価値を生み出すものであったはずなのに、今では忘れ去られた存在になっている。そんな思いが伝わってくるようである。一部をステレオで撮影したが、立体写真はその場所の悲しさをストレートに伝えてしまう。せめて、モノクロームでデフォルメしよう。彼らは忘れられた時間のはざ間で、じっとこちらを見ているのだ。
投稿者 sekiguchi : 2009年12月05日 10:00
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