STEREO CLUB TOKYO

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砂丘の花

 人類未踏の地。そんなものが現代のこの地球上にあるのだろうか。そんなことをぼんやり考えることがある。世界一高い山の頂上も、世界一深い海溝にも人類は到達した。ジャングルの中だってTVの映像としてお茶の間に届けられる時代だ。国土が狭い日本ならなおさら、誰も足を踏み入れたことのない土地などあるはずがない。
 人間は新しい土地を見つけ、開拓し、風景を変えてゆく。環境的に厳しい場所でない限り、どこにでも人間が作った痕跡を見つけることができる。大自然を写した写真集を見ても人間が作った道があり、人間が植樹した森が広がっている。もし、まだ誰も足を踏み入れていない場所があったとしたら。そこはどんな風景なんだろう。
 日本の国土から考えれば、そんな場所は原生林の奥のほうだけだろう。でも、僕が見たいのは森の中の景色ではない。広大な平原で、誰も住んでいない手付かずの土地があったとしたら・・・そんな場所はどこかの惑星に行かなければ見ることができないのだろう。ああ、そうなんだ。僕はどこか別の世界の「生命のある惑星」の風景が見たいのだ。
 そんなことをぼんやり思い出したりしていたある日。どこの場所かは教えてあげられないが、広大な手付かずの砂丘に行くチャンスがあった。その場所はまさにどこかの惑星の風景を思わせるものだった。ここはほとんど誰も足を踏み入れることがない。長い海岸線沿いに大きな砂丘が広がり、誰でも行けそうな場所。でも誰も行けない。そういう場所なのだ。
 砂丘一面に花が咲き、そこには誰の足跡も、誰かが作った道もない。天候のせいもあって、一面不思議な雰囲気に包まれている。もしも地球以外に似たような惑星があり、そこには知的生物が住んでいないのだとしたら。その惑星の海岸には、こんな風景が広がっているのかもしれない。僕はしばらくのあいだ、ステレオカメラを携えてこの星を探検した。

砂丘の花.jpg

投稿者 sekiguchi : 2009年11月28日 13:04


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