STEREO CLUB TOKYO

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キンダーステレオのひみつ

 このカメラはリアリストと同じデザイナーによる設計と聞く。確かにファインダーが下部にあり、おでこホールディングになっている。このファインダーが距離計連動で、二重像合致式になっている。この他にも、巻き戻しがクランク式になっていたり、セルフコッキングになっていたりとなかなか先進的なメカニズムを採用している。レンズはシュタインハイル社製の35mm/f3.5がついているけど、おそらくトリプレットだろう。
 このカメラは中古マーケットでもそれほど見かけない。希少なのかと思ったら、マーケットでの価格もそれほど高くはない。運良く安価で入手する機会があったけど、シャッターが不良だった。仕方なく分解して観察してみると製造コストをかなり下げた設計思想であることがわかる。作動不良の原因はガバナーの固着だった。ガバナーと言ってもあまり精度のよくない部品で組まれており、シャッターも2枚の穴明きスチールプレートを重ねて摺動させる方式のため、安定して作動させることが難しい。調整を重ねても安定しないのはシャッターのスチールプレートの間に汚れがあるためなのはわかっていた。でも、プレートを取り外すにはレンズを分解しなければならない。シャッターが絞りを兼用しているため、組みレンズの中間にプレートがあるのだ。残念な事にレンズ鏡筒は分解が難しい構造になっている。ムリに分解しようとするとレンズを傷める危険がある。
 結局、重分解を行っても、もともとの構造が精度の出にくいものだから、と調整を諦めてしまった。シャッターの修理を行おうとするとレンズの分解まで手をつけねばならない。そのためかマーケットでも完全に動作する機体は少なく、レンズのきれいなものも少ない。非常にメンテナンスのしにくい機種である。もしかしたら、斬新なデザインにしたものの販売戦略的に製造コストを下げるため、メンテナンス性を犠牲にしたのだろうか。良いデザインだけにとても残念。

キンダー.JPG

投稿者 sekiguchi : 2008年03月15日 13:22


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