« レンジファインダーの調整(後編) | メイン | シンクロ調整 »
巻き上げ部のオーバーホール
機体によっては巻上げが極端に重い場合がある。原因は二つ考えられ、その一つはフィルム圧板がフィルムレールに過度の力を加えている場合だ。フィルムレールがトンネル式ではないため、圧板の力がダイレクトにフィルムにかかってしまう。しかし、このケースでは巻き上げ操作が深刻な状況になることはない。フィルムを装てんしない状態で巻き上げノブが重い場合が今回のメンテナンスケースである。
原因は巻き上げ軸系のグリスが固着していることにある。ノブを止めるネジ①を外し、ギアの清掃とグリスアップ、軸部への潤滑油給油で回復する場合もあるが、分解することにより完全なメンテナンスができる。ただし、ここで紹介するのは後期型の巻き上げ機構に限っているので注意いただきたい。
軸部の分解は巻き上げスプール②にあるイモネジ③を外す。ネジの頭は四角になっているので、専用のレンチがない場合はドライバーを自前で削った特製の工具を用意する。このイモネジを外すとギア付きの軸④が上部に抜ける。スプールとラチェットギア⑤も外れる。ギアの組立は多少のコツがいる。組立に自信のない人は分解を諦めたまえ。
さて、軸を外したら清掃し、傷や錆浮きがあれば研磨をする。ボディ側の軸受部の清掃も同様。スプール軸内部にはフィルム端保持用の銅板が入っている。これが変形していると軸とスプールの平行が悪くなるので矯正しておく。組立時に軸受部にグリスアップし、丁寧に組上げれば驚くほどスムーズに回転し、巻き上げは格段に軽くなる。
分解のついでにラチェットギアとラチェット爪⑥の点検もしておこう。ギアの欠け、磨耗、ラチェット爪の磨耗は巻上げ不良の原因になる。残念ながら部品交換なしで回復はできないが、ギアは工具鋼で作られているので磨耗が生じるのはレアケースである。
後期型は紹介したようにラチェットギアで巻き上げ軸のロックをしているが、前期型はスプリング締め付けでロックするユニークな機構になっている。前期型、後期型の見分け方は、スプールの上をよく見ればギアかスプリングが観察できるのでこれで判別する。前期型も同様の手順で分解はできるが、組立は数段難しい。
投稿者 sekiguchi : 2006年05月13日 15:10
URL: http://here.there.jp/mt-tb_there.cgi/1251
コメント
この記事を読みながら前期型リアリストの巻上げ部を手入れしてみました。記述どおりものすごく軽くなりました。
投稿者 たこ : 2007年07月22日 19:01
うまくリペアできたようで良かったですね。
ギアや軸は硬い鋼で作られていますが、錆びやすいのです。
前期型は軸を鋼のスプリングで締め付けるようにしてロックをしますので、錆が出ると重くなりやすいのです。
ノブのみを外して固まったグリスを取り除くだけでも効果があります。①のネジは、アルミのボディに直接ねじ込むので、ネジ山を壊さないように、力を入れすぎないようにしてください。
投稿者 sekiguchi : 2007年07月22日 21:36