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レンジファインダーの調整(後編)
無事に革を剥がすことができたらおめでとう。底蓋のプレートは5本の小ネジで止めてあるのでこれを外す。底蓋には内側の要所に植毛紙が貼ってある。リアリストには隠れた細かい配慮がされているのだ。内部はミラーの組み合わせで光路が構築されている。レンジファインダーは、右側のミラー①が可動になっていて、フィルムレールからのピン②の回転がこれを動かしている。フォーカスダイヤルを無限遠に設定したときの可動ミラー①の位置を調整するのが今回のメンテナンスの手法だ。
フォーカスダイヤルをINF.にし、レンジファインダーで遠方の景色を覗き、調整ネジ③を少しずつ回す。前回紹介のプラグが外せればマイナスドライバーが使いやすい。プラグが外せなければネジの頭をラジオペンチで回す。像が合致したら、ネジの回り止めに接着剤や塗料で固定する。瞬間接着剤などの強力なものを使うと再調整をするときに困るから、黒ラッカーを使うのがいい。振動で回らなければいいのだから。
ちなみに、合致像の上下加減はスプリッターミラー④を調整する。これは小さな二つのミラーで構成されていて、それぞれが板バネ形式のアームに乗っている。それぞれ、板バネを止める二本のネジで調整することになるが、実はこのネジだけでは調整の自由度が足りない。こいつに手を出すと調整にえらく苦労することをあらかじめお伝えしておく。
調整を終えたら底蓋を閉じ、革を貼りなおす。ゴム系の接着剤を使うよう書かれた本もあるが、リアリストは合成樹脂のグッタペルカではなく山羊革なので接着剤だと後で剥がしにくい。両面テープのほうが作業がやりやすい。紙用の薄手のもので十分な接着強度が出るし、きれいに貼れる。貼りなおしもやりやすい。もし革を破いたりした場合は裏から目の粗い布を当て、ビニル系の接着剤で接着補修すると良い。では諸君の健闘を祈る。
投稿者 sekiguchi : 2005年11月13日 12:38
レンジファインダーの調整(前編)
レンジファインダーでフォーカスを合わせても、フィルム上で正しく結像しなければ撮影者の意図を反映できないことになる。メンテナンスではフィルム面位置の像を確認しながら、近距離も含めたフォーカス範囲で実用的な調整をする。つまり、ステレオゆえに2~3メートル先の被写体を主に撮るなら、その距離でレンジファインダーが正確になるように調整しておくのが正しい。実は、リアリストでは近距離で調整をすると無限遠ではレンジファインダーの像が僅かだが合致しない。これは、このカメラの設計上の許容誤差である。よく、レンジファインダーの精度を議論する上で基線長の長さを引き合いに出し、長いほうが高精度と結論付けるケースがあるがこれは誤りである。許容誤差がどのように設計上考慮されているのかを検証に入れなければ比較は無意味である。
さて、近距離用の調整は余計に手間がかかるし、フォーカスダイヤルがINF.でレンジファインダー内の遠方像がずれるのも精神的に良くない。実用上は無限遠で調整しても大きな支障はないので、比較的簡単な無限遠起点の調整方法を紹介しよう。簡単なのは裏蓋をあけ、下部にあるプラグ①を外して内部の調整ネジを回す。しかし後期型はプラグを外すのに特殊工具が必要だ。前後期のいずれにせよ調整後のネジは振動でずれやすいので、ネジの回り止めを施工するためにも底蓋をあけて調整する方法がベストだ。レンジファインダーのひみつは、カメラの底部にかくされている。底蓋を開けてそのひみつを知り、調整をしてみようではないか。
底蓋を開けるには革を剥がし、その下に隠れているネジを外さねばならない。革はヤギの本革だ。慎重に、破かないように作業をする。コツとしては、端のほうからナイフを入れて、接着剤を少しずつ切るようにする。決して強く引っ張らないこと。このオペはここだけ勇気が必要。断念するなら今のうちだ。やってみようという人は後編を待ちたまえ。
投稿者 sekiguchi : 2005年11月06日 13:25
分解室にようこそ
さて、ここからはリアリストを本格的に分解しちゃいます。ただバラバラにするのではなく、自分でメンテナンスをするにはどうしたらいいのか、というひみつを探ります。リアリストのひみつの核心に触れることができるかもしれません。市販の工具などで対応できるレベルで、工夫を凝らしたデータをもとに紹介します。メンテナンスにチャレンジしたい人は参考にしてください。では、ここからはイエロー・ジャック先生が担当します。でも、モグリの医者の言うことだから実践するときはよく考えてからやってね。よく言われることですが「自家修理・改造は自己責任で」とここでも言っておきましょう(笑
投稿者 sekiguchi : 2005年11月06日 13:21